
テレワークは本当に仕事の効率を上げるのだろうか。
この疑問について、2024年に科学誌「Nature」に興味深い研究結果が発表された。中国の旅行IT企業Trip.comの従業員訳1,600人を対象に、ハイブリッドワークと全日出社を比較する実験が行われたのである。
対象となったのは、エンジニア、マーケティング、財務などの従業員約1,600人。社員をランダムに分け、一方は週2日(水・金)の在宅勤務と週3日の出社、もう一方は週5日すべて出社する働き方とした。
実験期間は2021年8月から2022年1月までの約6か月間。
最も大きな変化の一つが離職率だった。
全日出社グループの離職率は7.2%だったのに対し、ハイブリッドワークのグループは4.8%。約33%の減少となった。特に、管理職ではない社員や女性、通勤時間が長い社員で、離職を抑える効果が大きく見られた。また、ハイブリッドワークの社員は、仕事やワークライフバランスなどへの満足度も高かった。通勤時間や通勤費を減らせることや、日中に必要な私用へ対応しやすいことなどが理由として考えられている。
「在宅勤務では社員の仕事ぶりが見えず、生産性が下がるのではないか」という心配もある。しかし、今回の研究では、勤務評価や昇進率について、ハイブリッドワークによる明確な悪影響は確認されなかった。ソフトウェアエンジニアについては、コードの行数も調査されたが、大きな差は見られなかった。また、実験前には管理職の多くが「在宅勤務は生産性を平均2.6%下げる」と考えていた。しかし実験後には「平均1.0%上げる」という評価へ変化している。
この研究だけで、すべての会社にテレワークが向いているとは断定できない。今回の対象は、主にITやマーケティング、財務などの仕事だったためである。ただ、少なくとも今回の実験では、週2日の在宅勤務は仕事の成果を大きく損なうことなく、離職率の低下や社員の満足度向上につながった。
重要なのは、「テレワークか出社か」という二択ではないのかもしれない。仕事の内容に合わせて、集中する仕事は自宅で、人との協力や話し合いが必要な仕事はオフィスで行う。そんな使い分けが、これからの働き方として重要になりそうだ。
Bloom, N., Han, R. & Liang, J. (2024). Hybrid working from home improves retention without damaging performance. Nature, 630, 920–925.Nature
https://www.nature.com/articles/s41586-024-07500-2
今回のコラムは、田中 光が担当しました。